# 分割しても十分長いポストになってしまいました。
まずはパリへの往復に使ったユーロスター Eurostar です。
レディング Reading から、ロンドン・パディントン London Paddington まではいつものようにファースト・グレート・ウエスタン First Great Western 鉄道で移動します。レディングを 08:03 に出発する列車に乗ったのですが、途中 1 駅しか停まらない列車なのに、InterCity ではなく、通常の近郊型のディーゼルカーでの運転でした。
今日 2008/07/27(日) からは妻は帰国してしまっているので、出かける準備も自分でしなければなりません。昨晩のうちにお茶を沸かして、ちゃんとペットボトルに入れてもってきました。
自分で入れてきたお茶
パディントン Paddington から、キングス・クロス・セント・パンクラス King's Cross St. Pancras 駅へは、本来は直行する地下鉄路線があるのですが、この日は工事であちこちの路線が止まっていて、直行できませんでした。日本でも工事で地下鉄が止まることはありますが、線路切替や橋梁交換のような大規模なもの以外は滅多にないのですが、ロンドンではしょっちゅう計画運休があって、特に週末は、毎週どこかは止まっているという感じです。
11 路線中 5 路線が工事中
駅員の方に確認すると、OxFord Circus 駅乗換えで行くようにということだったのでそれに従います。時間に余裕のあるスケジュールでよかったです。
PADDINGTON
OXFORD CIRCUS
KING'S CROSS ST. PANCRAS
キングス・クロス King's Cross の地下鉄駅ホームには王冠のタイル絵がありました。これで King's Cross ということでしょう。
KING'S CROSS のタイル
地下鉄のキングス・クロス・セント・パンクラス King's Cros St. Pancras 駅から上がっていくと、地上にはキングス・クロス King's Cros 駅と、セント・パンクラス St. Pancras 駅があります。今回乗車するユーロスター Eurostar は、昨 2007 年 11 月から、それまでのウオータールー Waterloo 駅への乗り入れから、セント・パンクラス St. Pancras 駅乗り入れに変更になりました。すぐ隣に建つキングス・クロス駅は、フライング・スコッツマンの出発駅として有名な駅です。
セント・パンクラス駅へ行く前に、キングス・クロス駅へ行ってみると、10:00 出発のフライング・スコッツマンの編成が停まっていました。(写真がボケボケなのは、とってくれたおじさんの手ブレのためです)
フライング・スコッツマン Flying Scotsman
第二次世界大戦中、ドイツ軍の空襲や V2 ミサイルが降り注ぐ中でも 10:00 ちょうどの出発を守り続けたという伝説の列車ですが、今は特別な車両が使われているわけでもなく、車体にも、発車時刻表にも Flying Scotsman の表示はなくさみしいものです。しかも戦争も何もない現代イギリス社会では、列車が時刻表通りに走らないことはありふれたことで、この列車も定刻発車を守れないことが多くあるに違いありません。
駅で配っている携帯時刻表には、この列車に "FS" というリマークがあり、リマークの意味が説明されているところで "FS - Flying Scotsman" と書かれていたのが、唯一この列車が伝説の列車であることを示していました。
セント・パンクラス駅へ移動し、チェックインの前に朝食を調達します。改札の前にある PAUL というパン屋さんで、パンを 2 種類と、カフェラテを買いました。
St Pancras 駅の PAUL という売店で買ったカフェラテ
買ったものを持って自動チェックイン機のゲートを通るとセキュリティがあります。ここで、係りの人から「飲み物はだめ。そこで飲み干して」と言われてしまいました。列の脇で飲んでいると、奥の方から、頭の固そうな女性の警備担当者がやってきて「あんた、こんなところで何やってんの」と文句を言ってきます。「あの人がコーヒーをここで飲み干せと言ったから飲んでる」と言うと、セキュリティーの係りの人と少し話をしていて、係りの人は「私がそこで飲めと言いました」というような説明をしてくれたのですが、どうやら女性の方が上司にあたるのか、何やら怒られていた様子で、結局私はセキュリティーエリアからチェックインゲートの直後まで追い返されてしまい、そこでコーヒーを飲む羽目になりました。ちなみに、飛行機と違ってユーロスター Eurostar は液体の持ち込みが禁止されているわけではありません... しかも改札の目の前にコーヒースタンドを兼ねたパン屋があるので、私と同じようにセキュリティーエリアから追い返される人が続出していました。飲み物を手持ちで持ち込む事を禁止する事に何の意味があるのか全然わかりません。そもそも列車に乗るのにセキュリティーゲートがある事も意味がわかりませんが...
ともかく、金属探知機と X 線のオーソドックスなセキュリティを通ると、イミグレーションがあります。これは実はイギリスの出国審査ではなく、フランスの入国審査です。入国書類のようなものを書くこともなく、全く質問されることもなく、汽車のマークのスタンプを押してくれました。
その先に待合室があります。ホームへは列車の発車 20 分前まで上がることができません。ここにもカフェがありました。外に手持ちに飲み物を持ってはセキュリティーゲートを越えられないという事と、セキュリティエリア内にカフェがある事を、明確に表示して欲しいところです。
待合室は新しいこともあって奇麗にですが、列車に乗る人数の割には明らかに狭すぎで、椅子の数が不足しています。しかも、こちらの人は周囲に立っている人がいたりしても席を詰めてくれるというような習慣はないので、たまたま先に入っていた人が、その人が入った時点では使っていなかったであろう椅子に荷物を置いてしまうと、人が増えてもそのまま荷物をどけもせずにぼんや
り座っています。
そのため、後から入ってきたほとんどの人は所在なげに立っているか、床に座り込んでいます。後からと言っても列車の発車時間の 40 分前ぐらいに入っているので、そんなに遅いというわけではありません。
セキュリティーを通過したところの待合室
しばらくするとホームへのドアが開かれ搭乗開始です。列車の写真を撮ろうと最後尾の方へ行ってみると、日本人らしき方が写真を撮っていたので、日本語で話しかけてみると、やはり日本人でした。お願いして写真を撮ってもらいました。
ユーロスター Eurostar
列車は定刻より 2 分ほどフライングして発車してしまいました。しかし出発して 5 分ほどで減速して停車してしまいました。停車して 2、3 分後「指示があって停車してます。理由を問い合わせ中です。パニックにならず、車外に出ないようにしてください」というようなアナウンスがありましたが、アナウンスが終わると同時ぐらいに動きはじめました。理由がわかったのかどうかわかりませんが、説明はありませんでした。
往路で乗ったのは一番安い Standard というクラスです。写真のような椅子です。椅子の幅は私には広すぎです。私はあまり広すぎない幅の椅子の方が好きなので、この幅は広すぎですが、多くの人は幅に関しては文句を言わないと思います。背もたれの高さも十分あります。しかし問題点はたくさんあって、とても座り心地の悪い椅子です。
座り心地の悪い椅子
まず、椅子の向きは固定されていて、回転しません。車両の中央付近に向かい合わせの席があり、その場所を境に、列車の半分ぐらいは進行方向向き、残りは後ろ向きに座ることになります。30 年ぐらい前の新幹線のようです。私は往復とも進行方向に対して後ろ向きに座らされました。
第 2 に、まったくリクライニングしません。背もたれの角度は完全固定です。立派なヘッドレストがついていますが、左右のサポートを含め、まったく調整できる箇所はありません。
第 3 の問題点は、シートピッチが狭すぎることです。こんな幅はいらないので、新幹線のように片側を 3 列の横 5 列にして乗車定員を確保した上で、シートピッチを広げて欲しいものです。
第 4 の問題点は、窓の位置です。シートと窓が別設計の航空機と違って、設計当初からシートの位置はわかっているはずだと思うのですが、シートの位置に窓がない席があります。私が座った席はまさにそのような席で、景色は前の席の横の隙間からしか楽しめませんでした。最悪です。
窓のない座席
最後の問題点は、テーブルがでかすぎることです。しかも位置が低すぎます。
でかすぎるテーブル
私はそんなに太っているとは思いませんが、シートピッチが狭いこともあって、テーブルを出すと、先端におなかがあたりそうなぐらい手前まで出てきます。しかも位置が低すぎるので、足を組むと太ももにあたってテーブルを一番最後まで開くことができません。体の小さな日本人の私でさえこうなので、体の大きな外人の方だと、このテーブルは全く使えないという人が多いと思います。
ともかく、文句を言っていても楽しくないので、乗った以上は楽しみます。列車は出発したので、買い込んだパンを食べることにしました。
PAUL のクロワッサンサンドイッチ
PAUL のミニ・パン
海峡トンネルに入ってしばらくしたところで、カフェに行ってみました。正式には Cafe ではなく Bar と呼ぶようですが、日本の列車ならビュッフェと呼ばれるであろう、売店と、ごく簡易な立席のスペースがある車両です。
ユーロスター Eurostar カフェカフェ (Bar) - 海峡トンネル内
カフェで、ラテを頼んだら、普通のコーヒーしかないと言われました。英仏を結ぶ列車でラテを売ってないのは驚きです。
コーヒーを飲んでいると、トンネルを出ました。窓の外が明るくなります。
ユーロスター Eurostar のカフェ - トンネル外
トンネルを出てしばらくすると「予定より 20 分遅れている」というアナウンスがありました。列車は最後まで遅れを取り戻すことなく、パリ北駅 Gare du Nord に 20 分遅れで到着しました。セント・パンクラス駅と違い、このホームには見覚えがあります。
パリ北駅 Gare du Nord
さらに進んで行くとドームの中へ入ります。
パリ北駅 Gare du Nord ドーム内
入国審査はロンドンで終わっているので、出口は一方通行であるだけで、普通のゲートを通るだけです。
復路
パリでのあれこれは別に書きます。ということで早速帰りです。
Gare du Nort でチェックインしてセキュリティーを通ると、イギリスの入国審査があります。前回 1998 年にユーロスターに乗った時は、イギリスの入国審査はウオータールー Waterloo 駅であったので、やり方を変更したようです。セント・パンクラス駅でのフランスの入国審査では何も聞かれませんでしたが、パリ北駅でのイギリスの入国審査は、Landing Card という書類を書く必要があり、質問も「何日間イギリスに滞在しますか?」、「イギリスでは何をしますか?」というような、普通の入国審査の質問がありました。
この後、昨 2007 年にできたばかりであるはずのセント・パンクラス駅に到着しますが、出口には入国審査を行うためのスペースがあり、"EU Passport Holder" などの案内表示が残っていましたが、施設は使われておらず、パリ北駅での到着時同様、一方通行のゲートを出るだけでした。もしも、2007 年 11 月以前から変更になっていたのだとすれば、セント・パンクラス駅にそのような施設を作った理由がわからないので、2007 年 11 月時点ではまだ到着国側で入国審査をしていたのが、その後、つまりごく最近変更になったのだと思われます。
変更するつもりがあったのなら、セント・パンクラス駅開業までに変更しておけば、無駄な施設を作らずに済んだと思うのですが、このあたりは英国式なのでしょう。
パリ北駅の話に戻り、イギリスの入国審査を抜けると免税売店などがあります。そういえば、セント・パンクラス駅には免税売店がなかったような... お国柄なのでしょうか。
ここからはガラス越しにユーロスターのホームを見下ろす事ができます。これも見覚えのある光景です。
2 F 待合室のガラス越しに見たユーロスターと TGV
待合室にはいくつかカフェがあります。その 1 つでカフェラテを買いました。普通カフェラテはエスプレッソを大量のミルクで割るので、それなりに大きなカップになるはずなのですが、ここのカフェは、エスプレッソ用と同じ大きさなのではと思うほど小さなカップです。最初注文を間違えられたのかと思いましたが、中を見ても、飲んでみても、カフェラテに間違いありません。
釈然としない感じです。
むちゃくちゃ小さいカフェラテ
発車時間 20 分ちょっと前に搭乗口が開放され、搭乗がはじまりました。階段を下りていくところで、パンタグラフを上から見る事ができます。よく見ると、使用している (上がった状態になっている) もの以外に、くの字が反対向きになったパンタグラフも付いています。TGV の車両も見えたので確認すると、TGV も同じようになっていました。複数電圧対応なので、場所によってパンタグラフそのものを変更するのかも知れません。
ユーロスター Eurostar の 2 組搭載されたパンタグラフ
帰りも記念写真を撮りました。往路と違って周囲に他の乗客がいなかったので、警備のおじさんにシャッターを押してもらいました。
復路もユーロスターと記念撮影
復路は一番安い席が売り切れていて、2 番目に安いレジャー・セレクト Leisure Select という席種です。この席は以前はたぶん 2+ と呼ばれていた席です。一番安い席だった往路と違い、車両自体に乗る時に、チケットを確認していました。
復路も定刻よりフライングして発車です。ダイヤを守るというつもりは最初から毛頭ないようです。
この席は、飛行機の機内食のような食事が付いています。乗ると、これまた飛行機と同じように、まず飲み物を配りにきます。ワインなども無料ですが、私はアルコールは飲まないのでコーラにしました。
最初の飲み物はコーラ
さらに 15 分ほどで車内食のメニューが配られ、ほどなく車内食が配膳されました。
車内食
この車内食は、見た感じも悪くないと思いますが、味もなかなか良く、量もほどほどで、おいしくいただけました。
往路もそうだったのですが、私は海峡トンネルに入るとなぜかトイレに行きたくようで、往復ともトンネル内でトイレに行きました。トイレはいかにも列車のトイレという感じのものです。
トイレ
往路同様カフェで飲み物を買いました。海峡トンネル内を撮影してみましたが、撮影している自分が窓ガラスに映っているのが撮れただけでした...
ユーロトンネル内を撮影しているつもり
復路の席は、往路よりさらに幅が広くなっています。往路のスタンダードの席は 2 + 2 の 4 列でしたが、この席種の車両は 2 + 1 の 3 列です。シートピッチも少し広いようですが、新幹線の普通車よりは短いです。向きが固定なのも、リクライニングしないのも同じです。設計者は、座席の幅だけ広くすれば快適になると考えているようですが、その考え方はよくわかりません。
復路のクラスの車両は、往路と違って、車両内の何箇所かで座席の向きが変わっていて、向かい合わせの席がいくつかあります。車両内で左右それぞれ 1 箇所の 2 箇所しかなかったスタンダード席車両と違い、向かい合わせの 4 人席が 1 つの車両ないにいくつも (たぶん左右それぞれ 3 つで、合計 6 つ) あります。私の席もそのような向かい合わせの席の 1 つでした。中央にはかなり広いテーブルがついています。向かい側には見知らぬ夫婦と思われる方々がいて、私の横にも、別の知らない人が座りました。
復路の席
座席自体の快適さでもそうなのですが、この向かい合わせ 4 人掛けの席に、知らない外人と座らされるというのもかなり厳しい感じでした。私よりもっとかわいそうだったのは、私の席からみて通路をはさんだ反対側の席の 2 人です。2 + 1 列で、我々の側が 4 人掛けということは、通路を挟んだ向かい側は、机を挟んで向かい合わせの 2 人席です。恋人同士が座るにはいい席なのでしょうが、私の乗った列車では、どちらもイカつい感じの、イギリス人っぽい男性同士が座っていました。乗車してきたタイミングも全然違うし、乗っている間中 2 人は会話することは全くなかったので、他人同士なのだと思います。お金を払ってこんな辛い思いをさせられるなんて... なんて不運な人たちなんでしょうと同情を禁じえません。
セント・パンクラス駅にかなり近づいたところで、往路と同じようにしばらく止まってしまいました。往路と同じように「パニックにならないで」という放送がありました。定刻より 10 分ほど送れての到着でした。
セント・パンクラス St Pancras 駅に帰着
次回は、自由の女神編です。
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